お知らせ
編集長のブログ95 『口臭白書2019』 - 2019.05.29
国際的に見て日本人の清潔好きは有名ですが、こと口臭に関しては、来日する外国人が閉口するという話は、昨今しばしば聞かれます。
来年はいよいよ東京オリンピックです。訪れる外国人の数もぐっと多くなります。口臭が原因で日本のイメージダウンが起きてしまっては、歯科に関わる人間としては責任を感じます。
外国人でなくても、会話や対面する相手の口臭が強いと、口臭の原因となるVSCガスには「殺傷能力がある」という話も現実的に感じられます。私自身も人を殺してしまわないように気をつけなければ(苦笑)、と肝に銘じています。
都道府県別の口臭ケア意識調査では、1位が徳島県、3位が高知県と、四国勢が上位に2県も入りました。徳島と言えば「阿波商人」、事前の予防が結局おトクであるという合理的な商人気質が原因では?とのユニークな解説もなされています。(大阪も4位なので、真実味を帯びてきます。)
口臭に限らず臭いの問題は、たとえ親しい相手でもそれを指摘するのがためらわれ、そのため自分では気づかずに周りに迷惑をかけている場合が往々にしてあります。やはり、家族など親しい相手には、きちんと伝えてあげたほうが絶対に本人のためです。
今回のセミナーで、口臭の度合いを計測する機器も紹介されましたが、身近な人の嗅覚できちんと「体感臭度」を判定してもらったほうが、現実的な成果が得られるように思います。
歯や歯茎だけでなく舌の清掃が大切であることが、近年は一般でも知られるようになり、タンブラシも販売されています。舌苔をきれいにすると口臭の4割が解消するとも言われます。
また、デンタルフロスなど、各種の歯科清掃用品の有効利用で、口腔内を清潔に保つことがとても大切です。歯科医院での定期健診によるプロフェッショナルツースクリーニングと、ブラッシング指導による適正な日常の口腔ケアの両面が求められます。
弊社刊の『口臭診療マニュアル』は好評のうちに在庫が完売、現在は電子書籍として復刻販売してております。「試し読み」のうえ、ご購読を是非ご検討ください。
編集長のブログ94 吉田渉先生と竹内正敏先生のこと - 2019.05.18
吉田先生は鳥取県開業、竹内先生は京都府開業で、場所的にすごく近いわけでも、出身校の関わりもありません。『季刊 歯科医療2019年冬号』の吉田先生の連載中で、頭部組織解剖図のイラスト作成で、改変の元となる図が竹内正敏先生の著書から引用されているのを見たとき、「おや?」と思いました。同イラストは、2019年春号にも引用されています。
(「季刊 歯科医療2019年春号」109頁より」)
竹内先生の原図を改変したこのイラストは、吉田先生の咀嚼理論を解説する際にとても有用な図になっています。
吉田先生は、「閉口筋と胸鎖乳突筋の触診からその患者さんの咀嚼方法が大まかにわかる」と言い、「筋肉は正直なものです」と述べています。スポーツ歯学にも通じることです。
吉田先生によると、連載を開始した後の昨年10月に『ここまでできる!スポーツ歯学から』が発行され、竹内先生とお二人で「第一歯科出版でつながったね(笑)」と、お話しされたそうです。それを伺ったとき、私もとてもうれしくなりました。
お二人の歯科臨床に対する考え方はとても似たところがあります。それが「健康歯学」です。予防を超えた健康歯学が、今こそ求められています。
「精神の安定のためにブラキシズムは悪くない」とおっしゃる先生もいます。確かにブラキシズムにより、精神疾患から免れているとしたら、必要な面もあるかもしれません。ただし、それも程度問題であることは、私の知人で強いブラキシズムにより歯を失ったケースがあることから明らかです。
一般の方々の中にも、「軟らかい物ばかり噛んでいると歯や顎が弱くなる」「硬い物を食べたほうが健康のために良い」と思い込んでいる人たちもいまだにいます。お口はそんな頑丈なものではないことを、もっと広く知らせていくことが大切です。情報発信の重要性を痛感させられます。
編集長のブログ93 平成から令和へ - 2019.05.08
弊社の創業は昭和61年10月ですが、法人化は平成元年のはじめ、まさに平成とともに株式会社第一歯科出版は歩んできました。
当時愛読していた漫画週刊誌に木村和久氏の連載「平成元年の歩き方」(翌年からは「平成の歩き方」と改題)が開始し、「アッシー君」などの流行語を生みだしたことも懐かしく思い出されます。
振り返ると、平成を歩んだ弊社の30年間は、バブルで盛り上がった平成初期の世間一般の歩みとは程遠い、きわめて地味な「平成の歩き方」でした。しかし、それでよかったのだと今は思います。
弊社の雑誌『季刊 歯科医療』は、当時の誌名は『デンタルアスペクト』でした。
1989年冬号が昭和64年1月1日発行、1989年春号が平成元年4月1日発行になります。
特集はそれぞれ補綴と知覚過敏、もちろん内容は今日の水準とは当然異なりますが、臨床に密着したテーマを地道に探求するという点で、基本的な編集姿勢はあまり変わらないように思います。
平成が終わり令和となり、また新たな時代のスタートと気持ちを引き締めています。
変えてはならないものは変えず、刷新するものは刷新し、常に歯科界への貢献を忘れずに精進していきたいと思います。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
編集長のブログ92 『歯科医療』2019年春号の特集は保険点数増加! - 2019.04.12
本号の特集は、「医療・介護同時改定―努力すれば算定点数は増加する!」です。
弊誌創刊以来30余年、臨床重視の編集方針から、基本的に臨床関係のテーマで特集を組み続けてまいりました。保険の巻頭特集は本誌初の試みとなります。
保険医である開業歯科医の先生方にとって、保険は日常臨床に深く密接し、切っても切れない問題です。特別な場合を除き、できる限り保険の範囲での治療を望む患者さんも多く、保険改定によって歯科医療のトレンドも変わってきます。
大幅な医療・介護の同時改定から、国が歯科に大きな期待を寄せていることもうかがえます。国民総医療費を抑えるためには国民の健康増進が不可欠であり、そのためには歯科の役割が大きいということなのでしょう。
健康を追究する「健康歯学」への流れはとどまることがないと思われます。
本特集では、保険点数算定の際に先生方が疑問に思うであろう点を取り上げ、「算定点数が増加する」ためのポイントをわかりやすく解説しています。Q&A方式の記事も多数掲載されており、すぐに役立てていただける内容です。
保険医必読の特集です。是非ご一読ください!(電子書籍も販売中です)
編集長のブログ91 「歯と口の健康週間」ポスター - 2019.04.08
2019年度の標語は、「いつまでも 続くけんこう 歯の力」
重点目標は、「生きる力を支える歯科口腔保健の推進~生涯を通じた8020運動の新たな展開~」です。
かつて6月4日は、語呂合わせで「6(む)」と「4(し)」をかけて、むし歯予防デーなどと一般では言われていました。今、弊社のカレンダーをふと捲ってみると、6月4日の数字の下に「歯と口の健康週間」と、正しく記載されています。
治療でも予防でもなく、これからの歯科医療は「健康」がキーワードとなることは明らかです。
弊社では、昨年10月の『ここまでできる!スポーツ歯学から』の発刊に際し、スポーツ歯学は健康歯学であるとの確信のもと、副題を『学校歯科からオリンピツクまでの健康歯科』とし、初めて「健康歯学」「健康歯科」というコンセプトを前面に打ち出しました。
近年の齲蝕減少に伴い、「未病」の考え方にも近い歯科治療の保険点数改定も行われました。また、歯科と全身との関わりは一般社会からも注目を浴びています。そのなかで、予防にとどまらず、健康を追究する「健康歯学」はすべてを包括し、歯科界の未来を明るいものにする新たなコンセプトであると考えます。
弊社発行の雑誌『季刊 歯科医療』では、その観点を重視しながら誌面構成を進めています。今後の弊社出版物にぜひご期待ください。
編集長のブログ90 口腔癌の鑑別診断に「新・こんな患者さんが歯科に来たときは?」 - 2019.03.03
タレントの堀ちえみさんが口腔癌(舌癌)にかかり、自ら公表したことで、歯科医の誤診が発見を遅らせたのではないかとの論議が起こり、大きな関心を呼んでいます。
堀ちえみさんと言えば、かつてテレビドラマ『スチュワーデス物語』で、ドジだけれど一生懸命なスチュワーデスの卵役を演じ、共演した風間杜夫さんに「教官!」と呼びかけるシーンは伝説的名セリフと言っても過言ではありません。
結婚し第一線を退いた後も、子だくさんでたくましい”ちえみママ”として再登場し、ママドルの走りともなりました。アイドル時代から一貫して「健康的」なイメージであったため、ステージ4の舌癌の公表は「えっ、あの堀ちえみさんがなんで・・・」と、とても驚きました。
歯科界でも、歯科で口内炎と口腔癌との鑑別診断ができなかった堀さんのケースに、衝撃が走っています。医院に来院するさまざまな患者さんに適切な対応をするために、是非弊社発刊の『新・こんな患者さんが歯科に来たときは?』をお読みください。
本書は、「第Ⅰ部 全身疾患への対応」と「第Ⅱ部 口腔外科疾患への対応」の二部構成になっており、今回のようなケースは第Ⅱ部に網羅されています。
口腔癌だけでなく、白斑症やヘルペスなど、口腔外科疾患は多岐にわたります。鑑別診断のポイントと代表症例が掲載されており、非常に役立ちます。
全身疾患についても、心疾患や糖尿病のみでなく、妊婦や認知症を有した患者さんへの対応などが含まれています。
この一冊で、日常臨床で対応する患者さんのほぼ全般をフォローできる内容です。
本書は2014年の発刊ですが、内容は全く古びていません。
先生の診療室に一冊、本書を置いてください。疾患の早期発見により、患者さんを救うために、是非本書をご活用いただきたいと切に願います!
編集長のブログ89 近義武先生出版記念セミナー(2月17日) - 2019.02.24
受講生は15人ほどのアットホームな雰囲気で、近先生との距離感も近い、濃密なセミナーとなりました。
近先生は決して美声ではないのですが(近先生、すみません)、個性的な味のある、よく通るお声で、予備校の名物講師もこんな感じなのだろうか・・・と思わされる、受講生を飽きさせないわかりやすいセミナーを展開しました。
また、当日は、受講生の方もレベルが高いのです。歯科医院経営に造詣が深い先生や、インターネットの活用に詳しい受講生もいらっしゃって、質問を聞いているだけでも勉強になります。なかでも、ある大きな医療法人の理事長の、「歯科のマーケットは、将来的に拡大されていく」という希望に満ちたお話にはとても勇気をもらいました。健康歯科・予防歯科の観点からのご意見で、弊社が現在目指している方向性とも一致しています。
講師の近先生のユーモアも交えたリズムの良い講義と、受講生との丁々発止の質疑応答で、あっという間にセミナーの終了時刻になりました。皆さん、とてもご満足されてお帰りになりました。
翌日、受講生の方から弊社に、「とてもよかった」とのお電話をいただきました。
「本で読むのと実際にお会いして話しを聞くのとでは、近先生のイメージが大きく変わった。本では平面的だったが、生き生きとした講義を聴けた」などのご感想を寄せていただきました。そして、「是非、第2弾もお願いします」と締めくくられました。確かに、セミナーですと、本には書けない突っ込んだお話まで、わかりやすく、楽しく伝えられていました。
出版社としては、「本だと平面的」という言葉がややショックでしたが(笑)、本には「好きなときに繰り返し読める」という大きな利点があり、どちらにもそれぞれのメリットがあります。
一方の近先生も、本を書いた著者の責任として、読者に内容をより詳しく正確に伝えるために、セミナーの第2弾も検討したい、というご意向を示されています。まだ未定ですが、もし第2弾を開催する場合は、当ホームページ等で告知していきたいと思います。是非ご注目ください。
また、弊社雑誌「季刊 歯科医療」でも、2019年冬号から、近先生の経営術のエッセンスをまとめた連載が開始されています。こちらもお奨めです。ご購読いただければ幸いです。
編集長のブログ88 猫ピッチャーがマウスガード - 2019.02.07
毎回、猫好きにはたまらないエピソードが満載で、そうでない人にも「猫にはこんな習性があって、それが野球をやるとこうなるのか・・・」と、可愛らしさに頬がゆるみます。
今週の2月3日号(日曜日)掲載の第299回「猫ピッチャー」では、ニャイアンツのエース・英須投手に触発されて、なんとミーちゃんがマウスガード(マウスピース)を歯科医院で作ってもらうという内容で、思わず「おおっ!」と目をみはりました。
(読売新聞2019年2月3日日曜版より引用 そにしけんじ作)
ついに猫ピッチャーまでマウスガードか・・・と、作者のそにしさんや読売新聞の編集の方が弊社発行の『ここまでできる!スポーツ歯学から』を読んで参考にしたのだろうかと思ったほどです。
歯型を採る際にミーちゃんがぶんぶんと嫌がっている姿には、「ミーちゃんには口腔内スキャナーを使ってあげてよ」と心の中で突っ込みを入れていました(笑)。
スポーツ関係者のマウスガードに対する関心は、確実に高まっていると思います。あとは医療者側がスポーツ歯学の観点からどう働きかけ、いかに選手が納得のいく形で提供できるかにかかっているのではないでしょうか。
マウスガードは作製して終わりではなく、後の管理が重要で、歯科医師の腕の見せ所です。スポーツの現場でも歯科が果たす役割は、ますます期待されていると実感しています。
編集長のブログ87 映画『笑顔の向こうに』の試写会 - 2019.01.31
一般にも大きく報道されたのでご存じの方も多いと思いますが、第16回モナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞(←すごいですね!)の話題作です。
主人公の歯科技工士を演じるのがさわやかなイケメン俳優・高杉真宙さん、恋人の歯科衛生士をホリプロタレントキャラバンでグランプリを受賞した健康的な美人女優・安田聖愛さんが演じました。松原千恵子さん、秋吉久美子さん、大出俊さん、中山秀征さんなどそうそうたるベテランが脇を固め、「厚生労働省推薦」のお墨付きももらい、以前から鑑賞を楽しみにしていました。
視聴後の感想は、「うーん、歯科医師会がここまでやるとは・・・(感嘆)」という感じでしょうか。主人公は北陸出身で実家は歯科技工所、上京して学校に通い歯科技工士として働いていると、同郷の幼馴染で歯科衛生士のヒロインと偶然再会します。歯科医療の現場と二人のラブストーリーが織りなす、現実の厳しさも踏まえながら青春の輝きを写し出した心温まる作品です。
訪問介護の悲喜こもごもなども描かれ、歯科の仕事、歯科技工士や歯科衛生士が多くの人を笑顔にすることができるとてもやりがいのある職業であることを、国民にアピールできる非常に良い映画に仕上がっています。
ネタバレになるので多くは書けませんが、ラストは主人公の二人の未来を示唆して終わります。
本年2月15日よりロードショーが始まります。機会のある方は是非ご鑑賞ください。
日本歯科医師会の堀憲郎会長もエキストラとして短時間登場しています(昨日、スクリーンで見つけて、「あっ、堀会長だ!瀬戸口常務理事も」と)。いずれも一瞬の登場なので、会長らの出演場面をお見逃しくなく(笑)。
編集長のブログ86 診療報酬「妊婦加算」が凍結へ - 2018.12.14
妊婦に対する配慮は、エックス線診断を日常的に行うを歯科臨床の現場は身近なところです。結婚して子供を授かる可能性が生じた女性が、「レントゲンを撮られるから、妊娠する前に歯の治療をしておこう」と考え、歯科を受診したという話はよく聞かれます。
そのため、歯科が蚊帳の外であることはおかしいという歯科医師会の活動はもっともなことと思われ、弊社も応援しなければいけないと考えていました。
ところが、今月13日、厚労省が妊婦加算について運用を凍結する方針を固めました。
(2018年12月14日 「読売新聞」朝刊1面より)
要するに、医療費における妊婦の自己負担が増えることから、少子化対策に逆行するとの批判が出ていたのです。「妊婦税だ」などとまで言われていたようです。
妊婦側からすると、自分の財布から出るお金が増えるだけだから、余計なことをしないでくれということなのでしょう。私は、自己負担の増加がどれだけ本人の重荷になるか、という観点を見落としていました。
電車などでお年寄りや体の不自由な人に席を譲るのは当たり前だから、「あえてシルバーシートは必要ない」という論議が時折なされます。しかし、満員に近い電車内でシルバーシートに空席があっても、いざお年寄りなどが乗車してきたときのために、若者らは立ったままでいるという光景も見られます。一般社会においてはシルバーシートは確かに役に立っています。
それに対し、プロ集団である医療機関が、妊婦に対し特別な配慮をすることは当たり前のことです。当然の行為を行うために診療報酬が加算され、受診者側は薬代を含めた自己負担増に苦しむというのはよく考えるとおかしく、「凍結」が望ましいように思えました。
凍結の方針を進めた立役者は、小泉進次郎厚生労働部会長とのことで、政界の次期エース候補に挙げられるだけの力量はあるようです。
物事を両面から見ることの大事さはよく分かっていたつもりですが、習慣のように「逆の立場から見たらどうなのだろう?」と考える癖をつけておきたいと思いました。