編集長のブログ98 訪問歯科診療の心遣い
超高齢社会を迎え、訪問歯科診療の需要はますます高まっています。人の晩年におけるQOLの維持に果たす役割は多く、訪問歯科診療を実施する歯科医院は少しずつですが確実に増えています。
埼玉県開業の奥原利樹先生は、手探りで始めた訪問歯科診療を20年近くも続けて大きく発展させ、安定した経営につなげて成功しているという点では、その道のパイオニア的存在と言えます。
『季刊歯科医療』2019年の夏号では、「訪問歯科診療のススメ 【実践編】」の連載第2回として、訪問歯科診療の際の心遣いについて執筆されています。
まず初診時の料金の説明の重要性に始まり、患者さん家族の支払い可能額を確認することは決して失礼なことではなく、【思いやり】であると説きます。
確かに、お金の話は言いにくいなどと遠慮して、後で患者さんご家族が「こんなはずではなかった」となっては元も子もありません。
介護に追われているご家庭では掃除もままならず、時にはゴミ屋敷やケモノ道になっているご家庭もあるとか。介護中の私の知人でも、これに近いような話は見聞きします。その方たちにとっては「それどころではない」という状況なのです。
相手方の事情を理解し、部屋をじろじろ見ない、特に水回りには立ち入らないなど、さまざまなワンポイントアドバイスを解説してくださいました。奥原先生はとてもお優しい人柄なので、よく気がつかれるのだと思います。失敗談も含むご自身の経験を通して、さまざまなことを学ばれ、それを読者の皆さんに伝授してくださっています。
こうした心遣いは、訪問歯科診療のみでなく、私たちが一般社会で普通に相手先を訪問する場合にも当てはまることが多数あります。
先日、弊社を訪問した来客が、事務所内のロールカーテンをおろした裏側を覗き込んだり、机の脇に置いてあった紙袋の中を覗き込んだりして、何の興味本位かと不快な思いをさせられました。
こういうケースは滅多にないので唖然とするだけでしたが、これからは気づいたら「やめてください」とはっきり言おうと思います。同時に「他山の石」として、自分が他家や他社を訪問する場合は、奥原先生伝授の心遣いを忘れないようにしたいものです。